やさと茅葺き屋根保存会だより

茨城県石岡市周辺には、筑波山麓のやさと地区を中心に約40棟の茅葺き屋根が点在します。

かまたや④6/4 古茅のゆくえ

かまたや工事2日目。

今日も古茅を下ろします。

西面は済んだので、南・東・南とすすめていきます。(屋根はL字型)

 

茅を下ろした西面にはシート。まずは「ながら」をくくるためのひも取り。

店主鎌田さんも率先して屋根に上り、躊躇なく茅を掴んで引き抜いていきます。

過去の工事では掃除などの簡単な手伝いくらいはしたけれど、

一緒に屋根に上って作業するのははじめて。ということで、

「いや~、大変な仕事ですね」と何度もおっしゃっていました。

後日談ですが、はじめの茅下ろしが一番きつい作業だったと話してくれました。

 

南面1、東面、南面2

東面にとりかかる。みな黙々と作業。

東面完了

南面。竹簀巻きのグシ(棟部分)がかなりくたびれています。

青空のもとで。

今日は、保存会メンバーで有機農業をしている山田農園さんが

古茅を引き取りに来てくれるということで、

ここまで約2日間で出た大量の廃棄茅が、どんな行く末をたどるのか見届けるべく、

運搬に付いて行かせてもらうことになりました。

 

2tトラックに満載の廃棄茅

のどかな八郷の農道をしばらく走り、山田農園さんの畑に到着しました。

ここは今年新たに耕作をはじめたという畑で、枝豆、ズッキーニ、かぼちゃ、きゅうりなどの夏野菜が植えられています。

 

畝間に古茅を運ぶ山田さん

かつて、多くの農家の屋根が茅葺きだった頃、

葺き替えで出る廃棄茅(古茅、くず茅、茅ごみとも)は堆肥として重宝され、

葺き替えをはじめた家の前には軽トラが並んだ、なんて話しもあるそうです。

かまたやさんの10年、20年経過した屋根も確かに、表層は半分土に変わっていました。

 

茅葺き屋根が減ったいま、古茅を堆肥にする習慣は途絶え、

解体工事で排出された産業廃棄物として、業者が有料で処分することになります。

しかし茅手の渡辺さん曰く、最近は山田さん以外の保存会メンバーで農業をしている人数人も古茅を取りに来てくれるようになり、助かっているそうです。

この循環がさらにまた広がっていくとよいですよね。

 

有機農業の研修生の方々も古茅を運んでくれました

山田さんは、有機農業を営みながら「NPO法人八郷・かや屋根みんなの広場」という

茅葺き民家を舞台に、昔ながらの農村の暮らし体験をみんなで共有する活動もされていて、

農業と茅葺き屋根のつながりにも理解の深い方です。

 

15a(アール)=1500㎡の畑に、かまたや1軒分の古茅がぴったり

いわゆる敷き藁の要領で、畝間(うねま)に古茅を敷き詰めました。

まずは雑草を抑制したり、支柱無しでもつる性の野菜が伸びる助けになるとか。

これから梅雨なので、長いままの茅もある程度畑になじみ、夏野菜の収穫が過ぎて、いずれは土と一緒に混ざっていく。

土に有機物を入れることによって、微生物の働きを促す。

茅(すすき)は藁などの他の草に比べて堅い分、長く残るため効果も長いそうです。

 

屋根としての働きを終え、土に還る。

かつての人の営みには、

時の流れに沿って、恵みを無駄にすることなく、自然と共に暮らす知恵があった。

わたしもそれを学んでいきたいと、思った日でした。

 

 

やまふじかおり